PROJECTS
原点/住まい
安藤忠雄にとって、人間の「住まう」という最も根源的な営みを受け止める住宅こそが、建築の原点です。その作品の展開の中で、打ち放しコンクリート、単純な幾何学的造形、自然との共生といったキーワードに象徴される、安藤建築の原型は完成しました。初期の代表作から近年の圧倒的スケールの海外作品まで――住まいを通じて建築とは何かを問う、安藤忠雄の挑戦は今なお続いています。
光
極限までそぎ落とされたようなシンプルな造形。その無地の「カンヴァス」に光や風といった自然の息吹が映し出されることにより、安藤忠雄の目指す空間が生まれます。その意図がもっとも端的に現れているのが、一連の教会作品といえるでしょう。風、水、光、地中――それぞれに異なるテーマを与えられた建築作品の内に、それぞれに異なる光の空間が息づいています。
余白の空間
自らを「都市ゲリラ」と称した安藤忠雄が、都市において一貫して試みてきたのは、意図的に「余白」の空間をつくりだし、人の集まる場を生み出すことでした。その挑戦精神は、初期の小規模な商業建築から、「表参道ヒルズ」、「東急東横線 渋谷駅」、「上海保利大劇院」といった2000年以降の作品まで、変わることなく息づき、安藤忠雄ならではの個性的な都市建築の系譜が編まれています。
場所を読む
大自然に包まれた立地での安藤建築が登場するようになったのは、1980年代末からでした。以降、世界各地に美しくも力強い、建築による風景の創造がなされています。一貫するテーマは、周辺環境と一体化して、その場所の個性を際立たせるような建築です。その象徴が、30年間余りに及ぶ「直島の一連のプロジェクト」といえるでしょう。マスタープランなきままに、人間とアート、場所の自然風土と対話を重ね、生物が増殖するようにプロジェクトを拡張していった、その稀有の建築のプロセスが、かつての名もなき小島を、世界的なアートの聖地に育て上げる原動力の一つとなりました。
あるものを生かしてないものをつくる
安藤忠雄にとって、歴史の刻まれた建物の再生は、常に挑戦心をかき立てられるテーマでした。しかし、ここでいう“再生”とは、単に旧いものを残すことでも、それを新たなものとして塗り替えることでもありません。安藤流“再生”とは即ち、新旧が絶妙なバランスで共存する状態をつくりだすことです。そこに生まれる新旧の対話が、過去から現代、未来へと時間をつなぎ、場に新たな命を吹き込んでいく――安藤忠雄の壮大な挑戦は、グローバルな世界で、今なお進行中です。